2019年9月26日(木)いわてデジタルエンジニア育成センター(岩手県北上市)にて、講師に丸紅情報システムズの丸岡様をお招きしての「デジタル製造技術革新セミナー」を開催しました。
近年、日本の製造業は「人材不足の深刻化」と、デジタル技術の進展に伴う「第4次産業革命」という2つの大きな環境の変化に直面しています。人手不足が深刻化する一方で、デジタル革新によりロボットやIoT(モノのインターネット)、AI(人工知能)など先進的ツールの利活用が重要になってきています。
今回のセミナーは、強い現場力の維持と向上を目的としたデジタル製造技術革新セミナーと題して、3Dプリンタ・3Dスキャナを中心としたデジタル装置の最新動向と国内外の成功事例を紹介していただきました。
3Dプリンタ・3Dスキャナ装置の最新動向と活用事例
治工具、生産機械・ロボット部品への実例から学ぶ成功のヒント、今話題の金属3Dプリンタ「Desktop Metal(デスクトップメタル)」の紹介がありました。
金属3Dプリンタ 「Desktop Metal(デスクトップメタル)」
Desktop Metalの「Studio システム+」は、MIM1のプロセスを応用して金属材料での造形を実現する3Dプリンターです。 金属粉末と熱可塑性のバインダー( 結合樹脂剤 )を混合した材料を積層して造形するFDM方式( 熱溶解積層方式 )の「Studio 3Dプリンター」と、バインダーを脱脂する「デバインダーステーション」、高温で加熱し金属粉末を溶融結合させて焼結体をつくる「ファーナス( 焼結炉 )」の3つの機器でシステム一式を構成します。
当日は、実際に造形されたサンプルを見せて頂くことができました。
価格は3点セットで約4000万円とのこと。金属3Dプリンタの中では安価な方ですかね。また特徴として、サポート材がセラミック材料で積層され手で簡単に外せるとのことでした。これは魅力的ですね。
詳細は、こちらの丸紅情報システムズ株式会社さまのWebサイトをご覧ください。
https://www.marubeni-sys.com/3dprinter/desktopmetal/
3Dスキャナ装置「ATOS(エートス)」
ATOSシリーズは工業用途で使用されている光学式の3Dスキャナです。
https://www.marubeni-sys.com/3dscanner/index.html
素早く高精細な3D形状を取得することができ、シートメタル成型品、金型、タービンブレード、射出成型品、鋳造品などの検査に使用されています。接触式測定機やレーザー式測定機とは異なり、ATOSは測定対象物の表面形状を細かいポリゴンメッシュとして取得することができます。取得したデータと設計した3Dデータとを重ね合わせてカラーマップで検査を行ったり、取得したポリゴンメッシュから3Dデータを作成(リバースエンジニアリング)し、コピー品を製作することもできます。ATOSは幅広い産業で活用されていて、様々な大きさの対象物の測定が可能です。
検査ソフトウェアに「GOM Inspect」というものがあり、簡易的な検査機能で良ければフリー(無料)ダウンロードできます。 (※有償版だとマクロやテンプレートを作成し自動検査が可能なツールとなっています。)https://www.marubeni-sys.com/3dscanner/software/index.html#inspect
競争力を生むリバースエンジニアリング活用法
現物を3Dスキャンして3Dデータ化するリバースエンジニアリングの考え方とその手法、CAD&CAM/NC最適化について学びました。
どのような3Dスキャナでも測定した点群またはメッシュから直接設計に使えることはほとんどなく、欠損やノイズがあり、ソフトウェアでの処理が必要で、処理したメッシュデータから3DCADデータを作成する場合にも自動でサーフェス(面)を作成する方法と手動で作成する方法があり、目的によって使い分ける必要があるとのことでした。
リバースエンジニアリングソフト「Geomagic Design X」丸紅情報システムズ
https://www.marubeni-sys.com/geomagic/designx.html
切削加工プログラムを作成する最近のCAMソフトは、リバースエンジニアリングをして3DCADデータを作成しなくても、3Dスキャンしたメッシュデータ(STL)から直接加工を行うことができるようになってきていて、コピー金型の作成などには、CADのサーフェスデータと測定したメッシュデータのハイブリッドで加工を行うことも出来るようになってきていました。
自動検査システムの基礎と成功のためのノウハウ
測定から検査までの自働化ソリューションの紹介、自動車ボデープレス金型への活用事例紹介をしていただきました。
3Dスキャナ「ATOS」は、マニュアルでの測定、自動回転テーブルとの組み合わせによる半自動測定、ロボットシステムと組み合わせた自動測定が可能でした。
https://www.marubeni-sys.com/3dscanner/3ds/atosam.html
事前の検査計画を実施することで、測定データを読み込んで更新(クリック)するだけで自動検査出力が可能だったり、3DCADモデルデータのPMI(製品製造情報)を読み込んで自動で検査計画を実施することも可能でした。
当日のセミナーの様子(ダイジェスト動画)
最新の3Dプリンタ、3Dスキャナの動向、活用事例を聞くことができ、私も勉強になりました。人手不足の中で生産性を高めるためには、「デジタルツールなどの利活用」がカギとなります。そうしたツールを使いこなして現場作業の自動化を図りつつ、より付加価値の高い業務に重点化できる職場をつくるべく「人材育成」も今後求められるので、今回のセミナーを継続して開催していきたいと思います。