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レポートNo.093:製造業向けVR/AR/MRセミナー

 2020年3月11日(水)いわてデジタルエンジニア育成センターにて、㈱プロノハーツの藤森様を講師にVR/AR/MRセミナーを開催しました。㈱プロノハーツ様は、長野県塩尻市に本社があり、製造業における3次元CADデータ活用のコンサルティングや商品企画、開発、設計、試作、製造業用VR・ARシステムの開発・販売などを行っています。(ホームページ:http://www.prono82.com

 モノづくりにおける業務改善・改革が叫ばれる中で、VRは、設計段階でのDR(デザインレビュー)や、設備関係の整備、保全、技術教育などに活用が進んできています。技術が発展してきている一方で、自社での活用法が分からないといった課題を抱えている場合も多く見られます。実際に現場で活用できるものであるのかは、実際に機材を体験し評価しなければ分かりません。今回は実機の体験を交えながら、VR技術をはじめ、AR、MRに関する知識や導入する際のポイントなどを活用事例を踏まえ紹介して頂きました。

プログラム主な内容
午前の部
10:00~12:00
VR/AR/MRとは?・VR/AR/MRの基礎知識
・実際の企業での活用事例。
・中小企業がどのように活用していくか?
・ゲームエンジンの活用について
午後の部
13:00~16:00
VR/AR/MRを体験!自分の作った3次元データをVRで確認してみます。また、様々なVR/AR/MR機器を体験し特徴を認識します。

VR(Virtual Reality)

 VR(ブイアール)とは、Virtual Rality(バーチャル・リアリティ):仮想現実と一般的に日本では訳されて呼ばれています。コンピュータ上に作成したデータ(仮想空間)の中にヘッドマウントディスプレイと呼ばれるゴーグルのようなものをつけて仮想の世界を体験できる技術のことを言うのが一般的です。 右を向けば右の景色、上を向けば上の景色を見ることができます。

 簡単に言うと、3DCADやCGのデータの中に顔を突っ込む感じです。

 今回の講師のプロノハーツ様では、「pronoDR」というVRのアプリケーションを開発し販売をされています。3次元CADで設計された3次元CADデータを簡単操作でコンバートし、VRヘッドマウントディスプレイでのレビューを実現しています。

 今回のセミナーでは、VRは「事実上の、実質的な現実感」という意味で、単なる虚構ではなく、「ある程度、現実と同等の効果を有する」ことを指して用いられることもあると教えて頂きました。

詳しくは、こちらのITmediaさんのMONOistの記事を読んでみてください。
「VR=仮想現実感」は誤訳!? VRの定義、「製造業VR」の現状と課題
  https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1608/30/news037.html

 3DCADといっても現在は、2次元のディスプレイの中でパーツを回転したり拡大縮小してみていますので、実質3Dではなく、2D上の確認となっています。それをVRを活用することで、よりリアルな立体形状としてモデルを確認することができます。

 ㈱プロノハーツ様のVR製品「pronoDR」では、工具を用いての計測や使用確認が可能で、マーキング機能が搭載されており、バーチャル検図も可能、ケーブル配線を作成することも可能など、様々な便利機能があり、CAD空間に自分自身が入り込んで、サイズ感や各パーツがアッセンブルされた状態などのリアルな3次元デザインレビューを即時に行う事が可能となっていました。

AR(Augmented Reality)

 AR(エーアール)とは、Augmented Reality:拡張現実と呼ばれ、3DCADやCGで作ったデータを現実の世界に映しだす技術です。

 有名なゲームアプリで、「ポケモンGO」があります。ポケモンが現実の世界に表れますが、AR技術が活用されています。

自分の昔のなつかしい記事をみつけました。
ポケモンGOのAR技術について(2016年07月26日)
http://home3ddo.blog.jp/pokemon-go-ar

3DCAD-SOLIDWORKSのeDrawingsというスマホアプリでARを気軽に行うことができます。現実空間に置いてある指定されたバーコードを認識して、3D形状をスマホ画面上に表示させることができます。

 VRもそうですが、ARの利点(メリット)として、誰が見てもサイズ感が分かるというのがあります。コンピュータの画面上で見ていてもサイズ感というのが分かりません。熟練した技術者であれば、10mm、100mm、1000mmと聞いて直ぐにサイズ感をイメージできる人もいますが、みんながそうではありません。

 ARやVRで実際のサイズ感で形状を見ることができることで、物を作る前の検討がより具体的に行え、物を作ってみてからの作り直しなどの問題を減らすことができます。

 特に人間の手が画面上や現実上に表示されることで、人はサイズ感が把握しやすくなるということでした。pronoDRも手を表示できるようにしたら、お客様から購入してもらえるようになったということでした。

MR(Mixed Reality)

 VRとARをミックスしたものをMR(エムアール)Mixed Reality;複合現実と言います。仮想空間を現実空間に表現し、現実の世界を拡張させて体験することができる技術です。

マイクロソフトさんが開発販売している「Microsoft HoloLens」が有名です。
https://www.microsoft.com/ja-jp/hololens

 日本でもトヨタ自動車株式会社のサービス技術部がMicrosoft HoloLens を活用した、サービスエンジニア(整備士)を対象とした働き方改革の事例があります。従来の 2D の紙や Web の作業手順書・修理書を、3D ホログラムで実現し、生産性向上、技術スキルの標準化、習熟度の向上を実現しています。他にも、Dynamics 365 Guides や、業界に先駆けて 3D CAD データを活用したAIによる作業ミス・漏れの検出機能を開発しています。

活用方法・活用事例

 VR、AR、MRについては、理解できましたでしょうか。それぞれの違いの境界というのは人によって分かれていたりするみたいです。セミナーでは、これら3つの技術を製造業の現場で活用している事例についても紹介頂きましたので、一部、御紹介したいと思います。

株式会社サンキ 様

 石川県にある株式会社サンキ様では、フォークリフトのキャビンの設計でピラー(柱)やサイドミラーが邪魔にならないかどうかの検証を、 これまでは段ボールを使って試作していたのを、VRを活用しているそうです。
https://www.prono82.com/pronodr-casestudy/sanki/

 3DCADの中には人の目線位置等を確認できる機能もあったりしますが、距離感やサイズ感など把握しづらいです。 VRを活用することで、より現実に近い環境で確認を行うことが出来ますね。

日鉄住金テックスエンジ 様

 日鉄住金テックスエンジ様では、産業設備の整備作業において、工具や手がきちんと入るかどうかといった作業性の検討に利用しているとのことでした。
https://www.prono82.com/pronodr-casestudy/nittetsu-texeng/

株式会社デンソーエアクール 様

 株式会社デンソーエアクール様では、VR空間で工具を使って実際の組み付けを体験するのに活用されているとのことでした。実際に製品を作るときに作業者がどんな姿勢でどういった作業をするのかというのをシミュレーションしながら設計できるのでとても役に経ち、マーカーを表示できたり、ノギスで寸法を測ったりとデザインレビューを行う中で実用的な使い方をされているようです。
https://www.prono82.com/pronodr-casestudy/denso-aircool/

 

その他

 その他にも、教育ツールとしての活用や設備の安全対策にVRを活用したり、現場とのコミュニケーションに大活躍で参加型のデザインレビューができるようになったりなど、様々な活用用途と事例がありました。

 今回のセミナーの中では軽いワークショップもやりながら、VR/AR/MRを製造業に、どう活用できるかというのを考えたり、発表しあったりしました。受講者さまには、今後の自社での活用方法を探って頂ける内容となったのではないかと思います。また、今回は学生も参加してくださり、とても良い雰囲気でセミナーができました。

 今回は製造業向けのセミナーでしたが、製造業以外でも建築・建設、医療やファッション関係などでも活用が進んでいます。

 5年以上前にVR/AR/MRをやろうとすると、数千万円から1億円以上の経費が必要だったみたいですが、今は無料のビューアソフトや安価なゲームエンジンなどを活用したり、VR機器も数万円で購入できるものが出てきているので、昔に比べて安価に気軽に始めることができるようになってきています。 

 今回のセミナーでは、Oculus QuestとHTC Vive、Hololensを実際に体験しました。Hololensは40万円くらいしますが、Oculus QuestとHTC Viveは5~6万円くらいで購入できます。

 ソフトウェアもUnityやUnrealなどの安価なゲームエンジンを活用したり、今は最新のSOLIDWORKS2020のeDrawings2020でVRできるようになっています。今後3DCADとゲームエンジンやVR関係との連携が進んでくるものと思います。

 携帯電話も昔は大きなショルダーフォンで持ち運びが不便で、ある一部の人しか使っていなく高価なものでした、それが今や1人1台スマホを持って電話やメール、音楽を聴いたり、写真や動画を撮ったりする時代になりました。VR/AR/MRも日常生活の当たり前のツールになってくるかもしれませんよね。

 このマイクロソフトのMRの動画なんて映画みたいですけど、現実になるのは、もうすぐ、そこまで来ているのかもしれませんね。

 ぜひ一度、VRやAR、MRをやってみませんか?
 今後もVR等に関するセミナーを開催して、岩手県、東北の製造業での活用を模索する機会をつくっていけたらなと思います。

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